テクニカルダイバー加藤大典の日本人ケイブダイバー人類未踏水中洞窟探検プロジェクト『暁』第一期 前編
テクニカルダイバー加藤大典のメキシコ ユカタン半島セノーテ 日本人ケイブダイバー人類未踏水中洞窟探検プロジェクト『暁』第一期 前編
スキューバダイビングは、きれいな海や生き物を見て楽しむアクティビティですが、楽しみ方はそれだけではありません。器材をしつかり調整しアスリートのようにトレーニングや能力開発して水中という特別な環境での探検を楽しむこともできるのです。
僕は、潜ることが何より好きですが、この探検系のダイビングが輪をかけて大好きです。
テクニカルダイビングという分野ではこのような探検系のダイビングの方法を学ぶことができます。テクニカルダイビングを始めて15年。まだまだやりたいダイビングが尽きません。
さて今回は、いま世界的に水中洞窟として注目されているのは、メキシコ ユカタン半島のセノーテです。現地はダイブサイトの開拓も進んでいて、何人かの日本人ガイドさんたちも活躍していて日本人ダイバーの間でもとても注目されている地域です。
僕も8年前からセノーテに通い始め、サイドマウントというスタイルでのダイビングも始めました。多くのケイブダイバーを魅了するダイブサイトであり、世界でも指折りのケイブ探検家の集まる地域でもあります。しかしまだまだ人類が誕生してからまだ誰も訪れたことのない人類未踏水中洞窟がジャングルの中に存在しているのです。
グレートケイブダイバーの一人といってよいロビー・シュミッタ―。私たち日本人ケイブダイバーとも交流のある人です。ロビーさんは、メキシコのユカタン半島 (Yucatan Peninsula)にあるサクアクトゥン(Sac Actun)とドスオホス(Dos Ojos)と いう つの洞 窟シス テムを 結び付けギネスレコードをもつ人です。
そのロビーさんから、TDIトレーニング部⾧でもある田原浩一さんに、日本人ケイブダイバーだけで人類未踏洞窟の探査プロジェクトをやってみないかとお誘いがありました。
日本人ケイブダイバーはケイブ界の中でほんの少ししかいません。その中でのこの声掛けはセノーテで潜り続けている日本人ケイブダイバーへの評価といっても良いのではないかと思います。
田原さんが集めたテクニカルケイブダイバーは、日本からは、東京/オケアノスの TDI インストラクターの池田さん、沖縄/ベントスダイバーズの TDI トレーナーの大原拓さん、九州/トップシークレット IANTDインストラクターの大濱佑次さん、静岡/医師でテクニカル経験の豊富な田中圭さん、名古屋からは私、TDIJAPAN 代表でインストラクタートレーナーの加藤大典が参加。メキシコからは、カンクン/アクアプリの TDI インストラクター田中秀さん、トュルム/日本一セノーテを探検し今年メキシコに移住した医師の三保仁さん。これにロビーさんも加わり、9 名での探検が始まりました。
今回は個人での探検とは異なります。正式な記録としてメキシコ ユカタン半島の水中洞窟システムの地図に私たちの探検と測量の結果が反映されます。言うなれば、後世に残るものですから、これほどケイブダイバーにとつて光栄なことはありません。
まずメンバーに課された課題は、ジャングルを重い荷物を持って歩ける体力をつけておくこと。そのジャングルを歩くためのトレッキングシューズやシリンダーが 2 本収まる大型のリュックサック、雨期で蚊や虻が大量発生する時期なので、⾧そで⾧ズボンや虫よけ対策を用意すること。そして測量のための記録板を作成すること。
探検にワクワクするメンバーたちは、ダイビングとはまったく関係ない装備を準備してジャングルでのシュミレーションをしていたことと思います。
DAY1
セノーテの密集する街トュルムにあるシバルバダイビングセンターに隊員たちが集結。
ロビーさんの行う測量方法を学びます。あらかじめ作成した記録板にはコンパスと水平器、そして記録の数値をいれるための升目が引いてあります。
ステーションの水深を測り、角度を測り、距離を測ります。その情報をパソコンの測量マップアプリケーションに数値を入力すると、実際の水路が浮かび上がるのです。昔は分度器を用いてマップ作成をしていたことを考えると画期的で時間短縮ができるわけです。ランドワークを終え、水中でのトレーニングも行います。
DAY2
2 日目も測量の洞窟トレーニングを日中行い、午後からは、10 フィートごとにノッチのついたエクスプロテーションラインを巨大なリールにセットしていきます。このラインが命綱のひとつでもあり測量の大切なアイテムでもあり、私たちの探検の基点となるラインでもありますから、隊員たちは心をこめて、交代で念入りにリールにセットしていきます。そして翌日のパッキングを行い明日のジャングルに備えます。
DAY3
いよいよジャングルに向かいます。ロビー、ひでさん、三保先生の 4WD のピックアップトラックに便乗し、ジャングル入り口のでこぼこ道を進んでいきます。普通車では入れません。
ジャングルからはロビーが用意してくれた獣道のような通路を通って、奥へと進みます。足場は悪いし、気を許すとツルが足に絡みつきます。今回のターゲットはジャングルの中の小さなセノーテ三つ。セノーテとは、マヤ語で井戸という意味だそうで、地下水脈につながる陥没穴が泉となって地表に現れたものです。ケイブダイビングのベストは 2~3 名。田原さん&池田さん加藤チーム。大原さん&圭さんチーム。三保先生&秀さんチーム。ロビーさん&大濱さんチームとチーム構成も決まりました。
ジャングルの中の小さなセノーテから未踏の水中洞窟を目指します。
いま現在水陸合わせて世界最⾧洞窟はアメリカのテキサス州にあるそうですが、いつか、セノーテのシステムの総距離 270.17km の Sistema Ox Bel Ha と総距離 360.45km の Sistema
Sac Actum この2つの洞窟が繋がると地球最大規模になります。
私たちの探検は公式記録として残り、壮大な洞窟調査の一部として日本人ケイブダイバーによる人類未踏洞窟探検プロジェクト『暁』は貢献できるときがくるかもしれません。
詳しい探検の内容は後編に続きます。